記事一覧

カップリングシステム

2008.01.25

イラスト 18.jpg 「満点」と「マウンテン」、どちらが正解ですか? えー……そんな話はさておき、今回は『幕末恋華・花柳剣士伝』において採用となったカップリングシステムについて語りたいと思います。例によってネタバレ全開ですし、自戒的な反省文など見たくないという方はスルーされた方がよいかと思います。そうでない方は、以下の「続きを読む」をクリックしてください。

続きを読む

 今作で採用されたカップリングシステムですが、このシステムは、いかにして前作のストーリー(特にキャラごとの結末)を破綻させずに続編へ取り込むかということに主眼をおいたシステムであり、前作キャラと前作主人公の物語を続編で描き出すためのものではありませんでした。ややこしい説明で申し訳ありませんが、「今作においてカップリング設定を行っても該当キャラがあまり登場しない」という感想があるのは弊社としては当然のことで、少なくとも今作のメインキャラの攻略を進めていく上で、前作のストーリー(各ユーザー様が一番好まれる結末)と相反する展開の回避を至上の目的としたシステムであったわけです(結局は、こちらからのアナウンス不足で、必ずしもこのシステムをオンにしたからといって、お目当ての前作キャラが頻繁に登場するようになるわけではないという点を周知させられなかったことは反省の残るところです)。

 このシステムの採用があったからこそ、本格的な続編制作への道が開けたのですが、制作を進めるにつれ、このシステムの採用をもってしても回避できない矛盾がストーリーに生じました。前作と今作を何度もプレイされ、なおかつ、カップリング設定で才谷を選択して中村ルートをクリアされた方ならば、すでにお気づきかと思いますが、カップリング設定で才谷を選択しても“近江屋で大石が中村に斬り殺されない”という決定的な相違、矛盾があります。これは「生じた」というよりも、「生じさせた」という表現の方が正しいのかもしれませんが、すべての原因は大石のエンディングポイントを十四章に設定したことによります。大石というキャラクターの物語を才谷暗殺の時点で閉じていれば、そもそもそんな問題は起きなかったはずですが、寺山にとって大石ストーリーのラストはあの場所以外に考えられないものでした。その結果、カップリング設定に関わらず大石が中村に斬り殺されることはなくなってしまったわけですが、一番の問題はその改変に対する自然なストーリーの流れを構築しきれなかったことだと思います。台詞数の上限もあったとはいえ、もう少し何とかしたかったというところが本音です。寺山が遅筆であるがため、あのような内容のままタイムアップを迎えてしまいましたことを、お詫びしたいと思います。申し訳ありませんでした。

 これ以降の記事でも引き続きお詫び文を書き連ねて皆様を不快にさせるのも、本来こちらが望むことではありませんので、この場で鹿取菊千代のメインキャラ採用についても言及しておきます。続編制作前の寺山からのアナウンスで「攻略キャラは一新」としていたにも関わらずこのキャラが攻略キャラに加わったことも、言ってしまえば単純に寺山のわがままです。前作において山崎烝というキャラが心の内で何を思い描いていたか、その内面を自分は描ききっていただろうかという疑念を捨てきれず、今作のメインキャラに鹿取を加えることを決断しました。半ば確信犯ではございますが、この展開に落胆された方々もいらっしゃるかと思います。ともかく「前言を翻して続編を制作したこと」「攻略キャラを一新すると言いながら鹿取を攻略キャラに加えたこと」「カップリングシステムを用いても解消できなかった矛盾点があったこと」につきましては、改めて深くお詫びしたいと思います。申し訳ございませんでした。

 ひと通り恥を忍んでお詫びさせていただきましたが、寺山という人間はこの通りの人間ですので本来ならば更なる修行として恋華とは異なる次回作を作り上げ、成長した姿を見せることが本道であるかもしれません。ですが、すぐに……というのは、やはり難しいです。しばらくは裏方としての業務を中心に活動してまいりたいと思います。中心に、というところに含みを持たせたのは、もしもの話ではありますが、恋華移植のお話などが決まった場合は、皆様への恩返しとして拙いながらも引き続きディレクター(厳密に言えば「ディレクター的な立場」)として最後まで恋華シリーズの制作指揮にあたりたいと思い直したがゆえです。恋華キャラを単なる記号としてしか見ない、ありあわせのテンプレート素材やストーリーに恋華設定を無理矢理ぶち込んだような要望が提示されたなら話は別ですが、ディースリー・パブリッシャー様とは、よきパートナーシップをもってお仕事をさせていただいておりますので、少なくともディースリー・パブリッシャー様からそんな要望が出ることはありえないでしょう。なるべく今のうちに心身ともにリフレッシュさせ、もしもの場合に備えておきたいと思います。

 でも、そうなるとまたしばらくの間は、半ば現場組のようになってしまいますね……。引退、引退と何度も連呼しながらいっこうに引退しないでいると、結局はまた嘘つきになってしまいますので、ここは引退ではなく一時ディレクター職を離れるという休業宣言とさせていただきます。そうすれば、万が一ではありますが、いつか再び自分で思い描いたゲームを作りたいという衝動にかられた場合にも堂々と戻ってこれ……ますかね? とりあえず、今はそんな気などありませんし、恋華の新たな展開が確定していない現状において寺山がディレクター業務から一時身を引くことに変わりはありませんが、可能性だけでも残しておきたいと思います。本当に都合のいいことばかり言ってしまっていますが、再び厚い面の皮で復帰を果たした際は、これまで通り叱咤激励していただければ幸いです。恥ずかしい話もおおむね語り尽くしましたので、今後は恋華をプレイしていただいた皆様に楽しんでいただけるような内容の記事をお届けしてまいりたいと思います。